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よわいエンジニアのブログ

人口減少社会をどう生きるか

年末年始の休みでAI×人口減少 これから日本で何が起こるのかを読んだ。

AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか

AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか

「AI」と「人口減少」がタイトルには並列に書かれているが、この本の主題は「人口減少」の方。AIの話題については、申し訳程度でしかも若干否定派な意見が目立った。大まかな話の流れとしては、まず日本の人口減少問題の現状と未来予想について実際の予測数値を見ながら語られる。次に人口減少の原因分析と人口減少が引き起こす問題点について論じる。そしてタイトルにあるAIと人口減少問題を絡めて、その課題について指摘する。最後に、人口減少問題に対する取り組み例や筆者の提案する解決策が紹介されて幕を閉じる。といった流れ。

筆者は人口減少の原因をいくつか挙げているが、その中でも人口減少を引き起こす最も大きな要因は、東京への人口の一極集中だと述べている。人口の一極集中が引き起こす生活コストの増大長時間労働長時間通勤育児環境の悪化などが出生率の低下を招いているという。
これらの要因で起こる人口減少は、高齢化に繋がり、医療費・介護費の増大によって、税金・社会保障費の増大へと繋がり、働く世代の負担が増える。そのため消費が低迷し、経済成長率の低下を招くという。

人口減少社会において、AIなどの破壊的イノベーションは人手不足を解消し、生産性を高めることが期待される一方で、過度にAI化を進めれば深刻な人余りが起きてしまうのではないかと筆者は主張する。実際にアメリカでは、GAFAに代表されるIT企業は莫大な利益を上げてはいるが、雇用の人数はかなり少なく、一部の層が利益を独占してしまって、経済格差がこれまでにないほど広がっているそうだ。

日本にとっては踏んだり蹴ったりな状況となっているわけだが、この本は絶望に終わるわけではない。人口減少に歯止めをかける取り組みとして、企業の定年後の再雇用制度や本社の地方移転、地方大学の改革、社会保障分野への積極的なAI活用などを例に挙げている。AIの話題はあんまり出てこないにも関わらず、若干強引にAIとは闘うものではなく、利用するものだと締める。

人口減少の要因分析の話は読んでいて非常に納得感があった。自分も東京に住む働く世代の一人だが、確かに毎日の生活は結構苦しい。都市部の家賃は高すぎるから、郊外に家を借りて長時間の通勤に耐えているし、郊外とはいっても結構家賃は高くて家計を圧迫してくるからあんまり贅沢もできない。なるべく税金が安く済むように節税の情報をかき集めている。こんなカツカツの状況では、全く子供が欲しいとは思えない。こんな感じのことを感じている人は結構いるんじゃないかと思う。東京は子供を作ることに二の足を踏む環境であることは間違いない。

提案された解決策については至極もっともだなとは思うが、「AI・ロボット税」については反対したい。仕事の効率化を抑え込めば、結局長時間労働につながってしまうだろうし、先進国の日本がテクノロジーに対して消極的って大丈夫なのと思う。 あと定年が伸びるとか、貰える年金の受給額が少なくなるとか自分たちの子供の世代が不幸になるような政治はやめて欲しい。(定年が伸びるのが不幸と感じるかは人それぞれだが。)普通自分たちの後の世代が幸せに暮らせるように社会を作っていくのが政治家の仕事だろうに。結構政治に対する批判も多い本だったので、政治家に対する不信感も少し芽生えてしまったのだった。